10人産めば1人殺せる―小説『殺人出産』で今ある価値観の不安定さを揺さぶられた

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Twitter広告で見かけた『殺人出産』という小説。

今年の第155回芥川賞受賞を村田沙耶香さんが受賞されたということで、広告が出ていたようです。

『殺人出産』という不穏なタイトルに惹かれてあらすじを読んで衝撃。

あらすじ

今から百年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。命を奪う者が命を造る「殺人出産システム」で人口を保つ日本。会社員の育子には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは彼女の殺意。昨日の常識は、ある日、突然変化する。

物語の設定が気になりすぎてAmazonでポチってその日にすぐ読んで、ガタガタと価値観を揺さぶられた感じだったのでレビューです。

ネタバレになり過ぎないように書いていきますが、気になる人は本を読んでしまうのがオススメ!

562円とお手頃価格で文庫も出ていて110ページくらいなので、30分もかからず読めます。(Kindleもあるよ!)

人口減少の解決策は「殺意」から生まれる子どもたち

避妊技術が発達、「出産」の主流は人工授精となった。偶発的な妊娠はなくなり人口減少はさらに加速。そこで打開策として考えられたのが、「出産」の動機を「殺意」に求める「殺人出産制度」だった。

もうこの時点で、「え?え?」という感じでしたが、避妊技術が発達し偶発的な妊娠をしなくなるというのは普通にありえることだなと思いました。

そこで「殺意」を認めるというのは今の倫理観ではちょっと想像つかないですが・・・

「出産」したからこそ、そのリスクはわかる

人類が今まで普通にやってきた「出産」方法ですが、正直「自然分娩」のリスクはハンパないよなと感じています。

そもそもこんなに医療が発達しているのに、「つわり」の原因も解明されてない、「無痛分娩」と言っても様々な傷みが伴うという「出産」という事自体がいろいろと医学的にも未開拓な部分があるように感じます。

つわりは治療出来てもよくない!?と思ってしまう。

いざ産んでみると、産後しばらくは身体が思うように動かないし、無理すればそれがその後の人生の健康に響いてくる。

わたしは6人の相部屋だったのですが、その中でもお母さんたちみんな全く違う症状で入院中の1週間苦しんでいました。

ちなみにわたしは産んだ時に肛門の内側が裂けました(笑)しばらくトイレが怖かった・・・

1人でも大変なことを10人出産するほどの「殺意」とは

作中で出てくる「うーん、そうだなあ。ちょっとだけ気になってる人は、いるかな。でも一生かけて殺すのに、本当にその人でいいかっていうと、悩んじゃうんだよね」というセリフ。

本当にこの一言に集約されていて、それほどの強い「殺意」が世の中の人口を保っているというのはなんだか背筋がひやっとするような状況な気がします。

10人産むのは身体の負担も大きく、ぽんぽん産めるわけではない。

10人産むのに26年とかかけて、やっと「1人殺せる」という制度の中で人生をかけて殺したい人。

合法だからこそ、頭の片隅に皆が持っていて、身近にある「殺意」。

物語の中の価値観が理論的なので、今の自分の価値観が揺らぐ

今の自分は「殺人」というものは許されるはずのない罪という価値観の中で生きています。

でも物語の中では「殺人」や「殺意」が至極当然のものとしてあって、そして「殺人出産」は尊いものという価値観が理論的に描かれています。

さもすればいずれこういう価値観の世界がやってきてもおかしくないのでは?とすら思ってしまう。

自分の信じている価値観のスキを突かれたような、考えさせられる物語です。

『殺人出産』の短編集には表題作の他にも3つの短編小説が収録されていますが、そのどれもが価値観が揺らぐような世界観なのでオススメです。

では、また!

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